セキュア・バンク株式会社
プレスリリースCyber AI Research #02

セキュア・バンク、独自Cyber AI研究を次の段階へ ― 実行結果を踏まえて再挑戦する仕組みを初期検証

― 一度きりの回答で終わるAIから、実行結果を観測し、次の一手に反映して再挑戦するAIへ ―

セキュア・バンク株式会社(本社:東京都、以下「SecureBank」)は、2026年8月19日に発表した独自Cyber AI研究開発開始の続報として、研究を次の段階へ進めたことをお知らせします。

第1弾では、専用GPUを搭載しない一般的なノートPC環境でOpen Weightモデルを実行し、公開CVE情報からの教師データ作成、LoRAによる追加学習、そしてCyberGymによる実技評価を1タスクで通しで確認するところまでを実施しました。一方で、追加学習によってサイバーセキュリティ能力そのものが向上したかどうかは未確認であり、次の段階として評価対象の拡大を予告していました。

今回は、評価対象を対象ソフトウェアや脆弱性の種類が異なる3種類のCyberGym課題へ拡張したうえで、一度きりの回答で終わらせるのではなく、実行結果を観測して次の一手に反映し、条件を変えて再挑戦する仕組みの初期検証を行いました。

今回の初期検証

2026年8月時点で、第1弾と同じ自社のPC環境において実施・確認した内容です。

実行環境

実行場所
自社のノートPC上のローカル環境
専用GPU
なし(統合GPUのみ)
評価基盤
CyberGymをローカルに自己ホスト
制御
自社開発のHarness

Harnessの役割

生成
PoC候補の生成・調整
実行
生成したPoC候補の実行
取得
評価結果の取得
反映
実行結果を次の試行へフィードバック

初期検証の範囲

対象課題
異なる3種類のCyberGym課題
差分確認
脆弱性を含む版/修正済みの版の双方
再試行の確認
3課題のうち1課題(実ログ)
検証の位置づけ
仕組みが機能するかの初期検証

図1

第1弾から今回までの研究フェーズの進展

第1弾では「学習工程を自社で回せること」までを確認しました。今回は、評価対象を3種類へ広げ、実行結果を次の試行へ戻して再挑戦する仕組みの初期検証へ研究を進めています。

  1. 第1弾2026年8月19日 発表

    学習工程を自社で回せるかの検証

    1. Open Weightモデルのローカル実行
    2. 教師データ作成
    3. LoRA追加学習
    4. CyberGym 1タスクのEnd-to-End確認
    確認できたこと
    専用GPUを搭載しないノートPC環境で学習工程を自社で回せること
    未確認のこと
    追加学習によるCyber能力の向上(未確認)
  2. 今回2026年8月24日 発表

    実行結果を踏まえて再挑戦する仕組みの初期検証

    1. CyberGym評価を3種類へ拡張
    2. 脆弱版/修正版で差分確認
    3. 実行結果を次の入力へ反映し、条件を変更して再試行
    確認できたこと
    1課題で「初回失敗 → 再試行 → 成功」を確認し、再試行の仕組みが機能すること
    未確認のこと
    課題の解決率・Base Modelとの性能差(引き続き検証中)

第1弾で残していた課題――「学習は回せた、Cyber能力は未確認」

2026年8月19日に公開したプレスリリース「セキュア・バンク、Open Weightモデルを基盤とした「国産Cyber AI」の研究開発を開始」では、大規模なGPU基盤を先行整備せず、専用GPUを搭載しない一般的なノートPC環境から研究を開始したことをお知らせしました。

そこで確認できたのは、次の範囲です。

  1. Open Weightモデルのローカル実行
  2. 教師データ作成
  3. LoRA追加学習
  4. CyberGym 1タスクのEnd-to-End確認

すなわち、Open Weightモデルをローカルで実行し、公開情報から教師データを作成し、LoRAによる追加学習を経て、CyberGymの評価が1タスクで通しで動作することまでを確認した段階でした。

一方で、追加学習によってCyber能力が向上したかどうかは未確認であり、第1弾の時点では「次に評価対象を広げてCyber Security能力を実技評価する」ことを次の研究段階として位置づけていました。

今回は、この予告した段階へ実際に研究を進めたご報告です。

一度きりの回答で終わるAIから、再挑戦するAIへ

評価対象を広げる過程で明らかになったのは、モデルの性能を測る以前に、LLMを制御するHarnessの側に改善が必要だという点でした。

ここで言うHarnessとは、AIに実際の課題を解かせるための司令塔にあたるプログラムです。具体的には、PoC(Proof of Concept)候補の生成・調整、生成したPoC候補の実行、評価結果の取得、そして実行結果を次の試行へフィードバックする役割を担います。

第1弾の時点でのHarnessは、次のような構成でした。

  1. 課題をLLMへ入力
  2. 回答を取得
  3. 出力形式を検証
  4. 不正なら1度フィードバック
  5. 提出

この構成では、出力形式が不正な場合にフィードバックを与えることはできますが、実際に実行した結果を踏まえて条件を変え、もう一度挑戦することができません。実際のCyberGym課題では、1回目の試行が想定どおりに進まないことが前提となるため、回答を一度受け取って終わる構成では、そもそも課題に取り組めているとは言えない状態でした。

そこで今回、Harnessを改善し、生成したPoC候補を実際に実行したうえで、その結果を次の入力へ戻し、条件を変えて再試行できる構成にしました。

図2

「AIに答えさせる」から「AIに試行錯誤させる」へ

一般的なAIの使い方では、回答が返った時点で処理が終わります。今回のHarnessでは、その回答を実際に試し、結果を次の入力へ戻す構成にしています。

  1. 一般的なAIの使い方

    回答が返れば終了する

    1. 質問
    2. AIが回答
    3. 終了
  2. 今回のHarness

    結果を次の試行へ戻して再挑戦する

    1. 課題
    2. PoC候補を生成・調整
    3. 実際に実行
    4. 結果を確認
    5. 結果を次の入力へ反映
    6. 条件を変更
    7. 再試行

      「PoC候補を生成・調整」へ戻る

一般的なAIは回答が返れば終了します。今回のHarnessでは、回答を実際に試し、その結果を次の試行へ戻すことで、一度失敗しても条件を変えて再挑戦できる構成にしています。

一般的なAIの使い方では、質問に対して回答が返れば処理は終了します。今回のHarnessでは、その回答を実際に試し、結果を確認し、その結果を次の入力へ反映したうえで条件を変更し、再度PoC候補の生成・調整へ戻します。これにより、一度失敗しても条件を変えて再挑戦できる構成になっています。

異なる3種類のCyberGym課題で初期検証を実施

改善したHarnessを用い、対象ソフトウェアや脆弱性の種類が異なる3種類のCyberGym課題を対象として、初期技術検証を実施しました。

なお、本リリースでは対象となったソフトウェアや脆弱性の詳細、課題の識別情報は公開しません。研究段階の検証であり、悪用につながり得る情報を含むためです。

二つの版で確かめる

生成したPoC候補が狙った問題に関係しているかを確かめるため、同一のPoC候補を脆弱性を含む版修正済みの版の双方で実行し、その差分を確認しました。技術的には patch-differential validation と呼ばれる考え方にあたります。

図3

生成したPoC候補を「二つの版」で確かめる

同一のPoC候補を、脆弱性を含む版と修正済みの版の双方で実行し、結果の差分を確認します。

検証対象

Harnessを通じて生成・調整した
同一のPoC候補

  1. 脆弱性を含む版

    問題が再現する

  2. 修正済みの版

    問題が再現しない

脆弱性を含む版では問題が再現し、修正済みの版では再現しないことを確認することで、生成したPoC候補が狙った問題に関係しているかを確かめます。

3課題について、脆弱性を含む版では問題が再現し、修正済みの版では再現しないという差分を確認しました。

1課題で「初回失敗 → 再試行 → 成功」を実ログで確認

3課題のうち1課題において、次の流れを実ログとして確認しました。

  1. 1回目
  2. 失敗
  3. 実行結果を次のLLM入力へ反映
  4. 次の試行条件を変更
  5. 2回目のPoC候補を生成・調整
  6. 再提出
  7. 成功

1回目の試行では提出に至らず失敗しましたが、その実行結果を次のLLM入力へ反映し、次の試行条件を変更したうえで2回目のPoC候補を生成・調整し、再提出した結果、提出に至りました。実行結果を次の試行へ戻す仕組みが、実環境で機能していることを確認できた事例です。

専用GPUを搭載しないノートPC環境で実施

今回の検証は、第1弾と同じく専用GPUを搭載しない一般的なノートPC環境で実施しました。AMD Ryzen 5 PROを搭載したノートPC上で、統合GPUのみを用いてローカルLLMを動作させています。

モデルの実行にはOllamaを利用し、Qwen2.5シリーズのOpen Weightモデルをローカルで動作させました。評価基盤であるCyberGymについても、外部サービスに依存せずローカル環境へ自己ホストしています。

大規模なGPU基盤を先行整備しなくとも、手元の環境で研究を進められることを、第1弾に続いて今回も確認しました。

今回の検証で確認できたこと・確認できていないこと

SecureBankでは、研究段階の発表において「確認できたこと」と「確認できていないこと」を明確に区別する方針としています。今回の検証結果は次のとおりです。

確認できたこと

  • 対象ソフトウェアや脆弱性の種類が異なる3種類のCyberGym課題で初期検証を実施できたこと
  • 生成したPoC候補について、脆弱性を含む版と修正済みの版の差分を確認できたこと
  • 1課題で、初回試行の失敗後に実行結果を次の試行へ反映し、条件を変更した再試行で提出に至ったこと
  • 実行結果を次の試行へ戻すFeedback Harnessが、実環境で機能すること
  • 専用GPUを搭載しないローカル環境でも研究を進められること

確認できていないこと

  • Cyber能力そのものの向上
  • Base Modelと追加学習モデルの性能差
  • Feedback Harnessによる解決率の向上
  • 多数の課題における再現性
  • より高度な自律推論の実現
  • 実運用環境での性能

第1弾から一貫して、SecureBankは追加学習や機能実装を行った事実だけをもって性能向上を主張せず、客観的な評価結果が得られた段階で公表する方針を継続します。

今後の展開

今後は、今回確認した再試行の仕組みを前提に、評価課題を段階的に拡大していきます。

  1. 評価課題の拡大
  2. Base Modelとの同一条件比較
  3. 失敗パターンの分類
  4. Datasetへの反映
  5. 再学習・再評価

単一課題の成功・失敗ではなく、複数の課題における成功率、試行回数、再試行の発生回数、失敗原因の分類等を記録し、Datasetや追加学習が実際のサイバーセキュリティ能力にどのような変化を与えるのかを検証します。

また、Harnessの改善そのものが結果にどの程度寄与しているかを切り分けるため、同一モデル・同一課題における改善前後の比較も進めます。

計算資源についても第1弾と同じ方針を維持し、まず現有のPC環境で検証を行い、モデル大型化やより大規模な学習の有効性が確認された段階で、GPU搭載開発機やGPUaaS等の利用を含めて研究開発環境を段階的に拡張します。

「小さく始め、数字で評価し、成果が確認できた段階で大きくする」

という研究開発方針のもと、評価によって性能改善が客観的に確認された場合には、その結果について今後公表していく予定です。

セキュア・バンク株式会社について

セキュア・バンク株式会社は、日本エンタープライズ株式会社のグループ会社として、サイバーセキュリティ領域における各種サービス・技術開発に取り組んでいます。

AI技術の進展を踏まえ、従来型のサイバーセキュリティサービスに加え、AIを活用したセキュリティ技術の研究開発を推進していきます。

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