セキュア・バンク株式会社
プレスリリースAI Orchestration Level 1

セキュア・バンク、AIエージェントの安全な実行管理を支えるAIオーケストレーション基盤を独自開発

― AIへの指示・実行・検証を分離し、証跡管理、重複実行防止、障害復旧を実装。Level 1 MVPの技術検証を模擬環境で完了 ―

セキュア・バンク株式会社(本社:東京都、以下「SecureBank」)は、国産Offensive Cyber/Cyber AIの研究開発の一環として、複数のAIエージェントへ安全に仕事を割り当て、その実行状況・結果・承認・検証を管理する「AIオーケストレーション基盤」のLevel 1 MVP(初期実装)を開発し、模擬環境での技術検証を完了したことをお知らせします。

ひとことで言えば、複数のAIへ仕事を安全に渡し、途中で止まった場合にも復旧でき、実行結果を後から確認できる基盤です。AIに仕事を任せる範囲が広がるなかで、「誰が、どのAIに、何を許可し、どの結果が返ってきたのか」をAI任せにせず、基盤側で管理することを目的としています。

今回完了したのは、基盤とCodex接続機能の実装、および模擬環境での技術検証までです。実際のCodexへのプロンプト送信はまだ実施していません。未実施の事項は「現時点での到達範囲と、まだ実施していないこと」にまとめています。

開発の背景 ― AIに任せる範囲が広がるほど、「統制」が重要になる

生成AIやAIエージェントの高度化にともない、AIの使われ方は「AIに質問する」「AIにコードを書かせる」といった一対一のやり取りから、次のような形へ広がりつつあります。

  1. AIに質問する
  2. AIにコードを書かせる
  3. AIから別のAIへ仕事を渡す
  4. 複数のAIが役割分担する
  5. 複数のPC・計算環境で処理する

一方で、AIへ仕事を任せる範囲が広がるほど、次のような点を確かめられることが重要になります。

  • 「誰が、どのAIに、何を許可したのか」
  • 「本当に承認された指示が実行されたのか」
  • 「同じ処理が誤って二重に動いていないか」
  • 「途中でAIやPCが停止した場合にどうするのか」
  • 「返ってきた結果が、本当にその指示に対する結果なのか」
  • 「後から実行内容を確認できるか」

今回の開発は、こうした統制をAI任せにせず、基盤側で管理することを目的としています。

AIオーケストレーション基盤とは ― AIの仕事を管理する「司令塔」

AIオーケストレーション基盤は、単にAIへ指示を送る仕組みではありません。

誰が → どのAIへ → 何を許可し → 何を実行させ → どの結果が返り → 誰が確認したのか

ここまでを一連で管理し、記録する仕組みです。

AIエージェントを「優秀な担当者」に例えるなら、AIオーケストレーション基盤は、仕事の受付、担当者への割り振り、権限の確認、進捗の管理、結果の確認、監査記録を担当する管理システムに近いものです。担当者がどれほど優秀でも、組織として仕事を任せるには、誰が何を頼み、誰が承認し、どのような結果になったのかを管理する仕組みが欠かせません。

図1

AIの仕事を管理する「司令塔」

AIへ指示を送るだけでなく、依頼から確認までの一連の流れを基盤側で管理し、記録します。

AIオーケストレーション基盤

仕事の受付・割り振り・権限確認・進捗管理・結果確認・監査記録

  1. 1

    誰が

    依頼者と依頼内容を受け付ける

  2. 2

    どのAIへ

    作業内容に応じて担当AIを選ぶ

  3. 3

    何を許可し

    承認と実行できる範囲を確認する

  4. 4

    何を実行させ

    承認された指示だけを渡す

  5. 5

    どの結果が返り

    結果がその指示に対するものか照合する

  6. 6

    誰が確認したのか

    検証工程を通過して初めて正式な結果にする

すべてを一つの記録に結び付ける

指示内容・実行内容・結果・承認情報を結び付けて、後から確認できる形で記録します。

途中で止まった場合

AIやPCが停止しても、記録からどこまで処理したかを確認し、復旧できるようにします。

途中で止まっても、どこまで進んだかを確認して復旧する

AIに任せる仕事が長く、複雑になるほど、途中でAIやPCが止まる可能性も高くなります。今回の基盤では、次のような停止・中断が起きた場合でも、記録からどこまで処理したかを確認し、復旧できるように設計しています。

  • 実行途中の停止
  • タイムアウト
  • キャンセル
  • 再起動

あわせて、同じ処理が誤って二重に実行されることを防ぐ仕組み(重複実行の防止)を組み込んでいます。「止まったから、とりあえずもう一度実行する」のではなく、「どこまで進んだかを確かめてから再開する」という考え方です。

今回開発したもの

今回のLevel 1 MVPで実装したものは次のとおりです。構成要素の技術的な名称は、各項目に補足として記載しています(詳しくは末尾の技術補足をご覧ください)。

作業依頼を順番に管理する仕組み

AIへの作業依頼を受け付け、順番に管理します。

技術補足:Packet Queue

実行履歴の記録

指示内容・実行内容・結果・承認情報を結び付け、改ざんが困難な形で記録します。

技術補足:Ledger

重複実行の防止

同じ処理が誤って二重に実行されないようにします。

技術補足:Lease/Fencing

担当AIの選択

作業内容に応じて、担当するAIを選びます。

技術補足:Dispatcher

作業の受け取りと報告

作業を受け取り、進捗や結果を基盤へ返します。

技術補足:Worker

Codexへの接続機能

OpenAI社のCodexへ、承認された指示だけを渡すことを目的とした接続機能です。実際のプロンプト送信はまだ行っていません。

技術補足:Production Adapter

停止・中断からの復旧

実行途中の停止、タイムアウト、キャンセル、再起動が起きても、どこまで処理したかを確認して復旧します。

実行と検証の分離

AIによる実行と、その結果を確認する検証工程を分け、実行した側の自己申告だけで完了にしません。

不正な操作の拒否

承認のない処理や、指示内容の不正な差し替えなどを拒否します。

セキュリティ面での考え方 ― AIを信用する前提にしない

今回の基盤で最も重視したのは、AIを信用することを前提にするのではなく、AIの実行を管理・検証できる構造にするという考え方です。

AIが「成功しました」と返してきても、その回答だけで正式な結果とはしません。指示・実行環境・承認・記録・検証工程を基盤側で確認し、そのすべてを通過したものだけを正式な結果として扱います(図2)。

人の組織に置き換えると、担当者からの「終わりました」という報告だけで完了とせず、依頼書・承認・作業記録・成果物を突き合わせてから完了とする運用に近いものです。

図2

AIの「成功」を、そのまま正式な結果にしない

AIの自己申告ではなく、基盤側での確認を通過したものだけを正式な結果として扱います。

AIからの報告:「成功しました」

基盤側で確認すること

  1. 1正しい指示だったか
  2. 2正しい実行環境だったか
  3. 3必要な承認が存在したか
  4. 4実行結果と証跡が一致しているか
  5. 5検証工程を通過しているか
  • すべて確認できた場合

    正式な結果として記録

    結果の記録が完了してから、正式な成功と判定します。

  • 確認できない場合

    正式な結果として扱わず、拒否

    • 承認のない処理
    • 指示内容の不正な差し替え
    • 同じ処理の重複実行
    • 許可された範囲を超える実行
    • 別の指示の結果との取り違え

技術検証の結果

模擬環境で実施した技術検証の主な結果は次のとおりです。いずれも実測・確認済みの結果です。

正式テスト

103/103

PASS

Production Acceptance

PASS

異常系・不正操作テスト

0件

回避成功

障害復旧チェックポイント

16項目

検証

再現性試験

20回

すべて同一結果

未解決の重大問題/HIGHリスク

0件/0件

あわせて、結果の記録が完了する前に、正式な成功と判定されたケースは0件でした。記録が残っていない「成功」を作らないための確認です。

また、次の5つが正しく結び付いていることを検証しています。

  • 作業ディレクトリ
  • 実行ファイル
  • 指示内容
  • 承認
  • 結果

そのうえで、次のような操作が拒否されることを確認しました。

  • 不正な指示の差し替え
  • 重複実行
  • 権限外の実行
  • 結果の取り違え

20回の再現性試験では、次の項目がすべての回で一致しました。同じ条件で動かせば同じ結果・同じ記録になることは、後から実行内容を確認するうえでの前提になります。

  • 結果
  • 状態
  • 証跡の並び
  • 成果物一覧
  • 障害復旧結果

現時点での到達範囲と、まだ実施していないこと

今回完了したのは、AIオーケストレーション基盤 Level 1 MVP(初期実装)とCodex接続機能の実装、および模擬環境での技術検証までです。検証の結果は「技術検証の結果」のとおりです。次の事項は、まだ実施していません。

まだ実施していないこと

  • 実際のCodexへのプロンプト送信
  • 顧客環境での検証
  • 商用環境での検証
  • CyberGymへの実接続
  • 実システムに対する攻撃実行
  • 複数AI/複数PCを利用した分散実行の実環境での検証

本リリースが示すものではないこと

  • AIが完全自律でサイバー攻撃を行う仕組みではありません。
  • 製品の販売開始や、商用サービスの開始を発表するものではありません。
  • 実際のCodexとの接続を実証したものではありません。

これまでのリリースと同様に、SecureBankは機能を実装した事実だけをもって成果を主張せず、確認できた範囲を区別して公表する方針を継続します。

国産Cyber AI研究との位置付け

今回の基盤は、単独のAIエージェント製品として開発したものではありません。SecureBankが進めている国産Offensive Cyber/Cyber AI研究開発を支える基盤技術として位置付けています。

今回のAIオーケストレーション基盤は、SecureBankが独自に設計・開発しているものです。基盤から利用するAIやLLMそのものをゼロから国内で開発したという意味ではなく、これまでの「国産Cyber AI」と同じく、外部のモデルやAIを活用しながら、それを管理・評価する仕組みを自社で構築していく取り組みです。

SecureBankは2026年8月より、Open Weightモデルを基盤としたCyber AIの研究開発を進め、CyberGymを用いた実技型の評価を重ねてきました。研究が進むほど、AIに任せる作業は増え、複数のAIや計算環境を組み合わせる必要が出てきます。そのときに、どのAIに何を任せ、何が実行され、どの結果が正式なものかを管理する仕組みが必要になります。

  1. これまで

    国産Cyber AI研究・CyberGym評価

    Open Weightモデルと独自Harnessを用いたCyber AIの研究と、CyberGymを用いた実技型評価を進めてきました。

  2. 今回

    AIオーケストレーション基盤 Level 1 MVP

    複数のAIへ安全に仕事を割り当て、指示・実行・承認・検証を管理する基盤を開発し、模擬環境で技術検証を行いました。

  3. 今後(予定)

    研究・評価の仕組みとの接続

    Cyber AI研究やCyberGym評価基盤を、この基盤の管理のもとで動かす構成を目指します。現時点では接続していません。

今後の予定

次の工程として、非機密のsynthetic packet(検証用の模擬指示)を使用し、隔離環境から実際のCodexへ接続するdry-runを予定しています。その後は、次の順番で進める予定です。

  1. 1

    隔離環境でのCodex実接続試験

    外部から切り離した隔離環境で、実際のCodexへ接続する試験を予定しています。

  2. 2

    指示から検証までの一連動作の確認

    AIへの指示 → 実行 → 結果取得 → 検証までを、実接続の状態で一連に確認する予定です。

  3. 3

    複数AI/複数PCによる安全な分散実行

    複数のAIや複数のPCへ仕事を分けて渡す場合にも、同じ統制を保てる構成を目指します。

  4. 4

    Cyber AI/CyberGym評価基盤との接続

    これまでのCyber AI研究やCyberGymを用いた評価の仕組みとの接続を予定しています。

  5. 5

    限定された社内検証

    範囲を限定したうえで、社内での検証を行う予定です。

  6. 6

    顧客向け活用の可能性の検討

    将来的に、お客様の業務で活用できる可能性を検討します。

いずれも今後の計画であり、内容や順序、時期は検証の結果により変更となる可能性があります。

技術補足:本リリースで用いる用語

AIエージェント
与えられた目的に沿って、作業の実行や道具の利用を行うAI。
Level 1 MVP(初期実装)
今回開発した基盤の初期実装。必要な機能に絞って構成している。
Packet Queue
AIへの作業依頼(Packet)を受け付け、順番に管理する仕組み。
Ledger
指示・実行・結果・承認などの履歴を、改ざんが困難な形で記録する台帳。
Lease/Fencing
同じ処理の重複実行を防ぐために、今回の基盤で用いている仕組み。
Dispatcher
作業内容に応じて、担当するAIを選んで仕事を割り振る仕組み。
Worker
割り振られた作業を受け取り、進捗や結果を返す実行役。
Production Adapter
外部のAI(今回はOpenAI社のCodex)へ接続するための接続機能。
synthetic packet
検証用に作成した模擬の作業指示。機密情報や実在のシステムに関する情報を含まない。
dry-run
本番の作業を行う前に、実際の接続経路を用いて動作を確かめる試験。
CyberGym
脆弱性に関する実技型の課題を用いた評価環境。

記載されている会社名・製品名は、各社の商標または登録商標です。

セキュア・バンク株式会社について

セキュア・バンク株式会社は、日本エンタープライズ株式会社のグループ会社として、サイバーセキュリティ領域における各種サービス・技術開発に取り組んでいます。

AI技術の進展を踏まえ、従来型のサイバーセキュリティサービスに加え、AIを活用したセキュリティ技術の研究開発を推進していきます。

これまでのリリースはお知らせ一覧からもご覧いただけます。

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