セキュア・バンク株式会社
プレスリリースCyber AI Research #04

セキュア・バンク、独自Cyber AI研究を第4段階へ ― 異なる脆弱性タスクへ自律適応するCyber AI Harnessの動作を確認

― 7BクラスのローカルLLMを推論部品として活用し、Evidenceに基づく攻撃Strategyの選択・変更、実験手法の切り替え、生成失敗からの復帰を実機で確認 ―

セキュア・バンク株式会社(本社:東京都、以下「SecureBank」)は、2026年8月31日に発表した独自Cyber AI研究の続報として、研究を第4段階へ進めたことをお知らせします。

今回のニュースは、AIが検証用のプログラムを作れたということではありません。7BクラスのローカルLLMを、独自HarnessがEvidenceに基づいて制御・検証・補完し、異なる脆弱性タスクに応じて探索方針を自律的に変更する挙動を、実機で確認したという点にあります。

具体的には、CyberGymの2つの異なる課題を、それぞれ別の観点で確認しています。いずれも人間の途中介入は行っていません。

  • arvo:46883:初回の失敗後も停止せず探索を継続し、修正前後の挙動の差を確認したうえでVALIDATED_POCと判定するまでを確認したTask。
  • arvo:38050:攻撃Strategyの自律変更、Strategyに応じた実験手法の切り替え、LLMの生成失敗からのRecoveryを確認したTask。脆弱性の再現やVALIDATED_POCへの到達は確認していません。

構造として言い換えると、「LLMがHarnessを動かす」のではなく、「HarnessがLLMを一つの推論部品として使う」アーキテクチャが明確になってきた段階です。

今回確認した範囲

2026年9月時点で、CyberGymの2課題を対象に実機で確認した内容です。

検証対象

評価環境
CyberGym
対象タスク
arvo:46883/arvo:38050
脆弱性タイプ
相互に異なる2種類
人間の途中介入
なし

arvo:46883 ― 自律探索とValidationを確認したTask

初回試行
NO_CRASH
その後
自律的に探索を継続
検出
Segmentation Fault(Exit 139)
最終判定
VALIDATED_POC

arvo:38050 ― Strategy変更・実験手法切り替え・Recoveryを確認したTask

方針の変更
Saturation判定後に別Strategyへ
実験手法
Strategyに応じて切り替え
生成失敗時
Source Evidenceから探索を継続
VALIDATED_POC
到達していない

使用したLLM

規模
7Bクラス
実行形態
ローカル実行
役割
推論部品の一つ
探索の制御主体
独自Harness

図1

第1弾から今回までの研究フェーズの進展

第1弾では研究基盤、第2弾では再挑戦の仕組み、第3弾ではその反復に意味があるかの評価までを確認しました。今回は、タスクごとに探索方針そのものを変える段階へ研究を進めています。

  1. 第1弾2026年8月19日 発表

    学習工程を自社で回せるかの検証

    1. Open Weightモデルのローカル実行
    2. 教師データ作成
    3. LoRA追加学習
    4. CyberGymによる実技評価
    確認できたこと
    研究開発基盤が一通り動作すること
    未確認のこと
    追加学習によるCyber能力の向上(未確認)
  2. 第2弾2026年8月24日 発表

    実行結果を踏まえて再挑戦する仕組みの初期検証

    1. PoC候補の実行
    2. 実行結果の観測
    3. 結果を次の入力へフィードバック
    4. 条件を変更して再試行
    確認できたこと
    1課題で「初回失敗 → 再試行 → 提出」の流れが機能すること
    未確認のこと
    課題の解決率・Base Modelとの性能差(未確認)
  3. 第3弾2026年8月31日 発表

    有益な再検証と、情報を生まない反復を区別する制御の初期検証

    1. 攻撃推論チェーンの接続(CyberGym 1課題)
    2. 実案件4ケースの実行ログの事後評価
    3. Information Gain Control Phase 1の受入条件を確認
    確認できたこと
    実行ログを事後に分類し、有益な再検証と停滞を区別できること
    未確認のこと
    実行中のAIへの自動介入・解決率の改善(いずれも未実装・未検証)
  4. 今回(第4弾)2026年9月5日 発表

    異なる脆弱性タスクへ自律適応するHarnessの動作確認

    1. Evidenceから攻撃Strategyを選択
    2. 成果が出なければ別Strategyへ変更
    3. Strategyに応じて実験手法を切り替え
    4. LLMの生成失敗時もSource Evidenceから探索を継続
    確認できたこと
    2つの異なる脆弱性タスクで、Harnessが探索方針を自律的に変更する挙動
    未確認のこと
    汎化性能の定量評価・多数タスクでの再現性(いずれも未実施)

研究開発の背景――再挑戦できるAIの次に必要になること

SecureBankは2026年8月より、Open Weightモデルを基盤としたサイバーセキュリティ領域特化型AI「Cyber AI」の独自研究開発を進めています。これまでに確認してきた範囲は、次のとおりです。

  1. 実行結果を観測
  2. 結果を次の入力へ反映
  3. 条件を変更して再試行
  4. 反復に新しい情報があるかを事後評価

第2弾では、実行結果を観測して次の一手に反映し、条件を変えて再挑戦する仕組みを確認しました。第3弾では、その反復に新しい情報が生まれているかどうかを、実行後のログから事後評価できることを確認しています。

ここまでで残っていたのが、そもそも「どの方針で試すか」を誰が決めるのかという論点です。従来の構成では、脆弱性の原因をLLMが推論してPoC候補を生成し、Harnessがそれを実行・評価していました。この場合、探索の方向はLLMの出力に大きく依存します。あるタスクではうまくいっても、別のタイプのタスクでは同じやり方を繰り返してしまう可能性があります。

今回はこの点に取り組み、探索方針の決定そのものをHarness側へ移す構成で、異なる脆弱性タスクに対する挙動を確認しました。

今回確認した「自律適応」とは何か

ここでいう自律適応とは、一つの問題の答えや解き方をあらかじめ登録しておくのではなく、問題ごとに得られた証拠を読み取り、試す方法を変えられることを指します。

より平易に言い換えると、次のような動作です。

ある方法で成果が出なければ、同じ方法を繰り返すのではなく、実行結果やSource Codeを手掛かりに、別の攻撃方針や実験方法へ切り替える。

専門的には「汎化」と呼ばれる性質にあたります。今回確認したのは、その汎化型Harnessが実際に動作したという事実です。あらかじめ答えを持っているのではなく、手掛かりを読んで、やり方を選び直すという挙動が、性質の異なる2つのタスクで確認できました。汎化能力を持ち始めたことを実験的に確認した段階であり、自律適応に向けた初期的な動作の確認にあたります。

図2

従来のHarnessと今回のHarnessの違い

従来は、LLMの生成結果を起点にHarnessが実行・評価していました。今回は、Harnessが先にEvidenceを読み、探索方針(Strategy)を決めたうえで、LLMをその方針を実行するための部品の一つとして使う構成になっています。

従来

LLMの生成を起点に、Harnessが実行・評価する

探索の方向はLLMの出力に依存し、Harnessは実行と評価を担当します。

  1. LLM

    脆弱性の原因を推論し、PoC候補を生成

  2. Harness

    生成された候補を実行

  3. Harness

    実行結果を評価

今回

HarnessがEvidenceを読み、探索方針を決める

Harnessが探索全体の制御主体となり、LLMは生成手段の一つとして呼び出されます。

  1. Harness

    Evidenceを収集(実行結果・Runtime Stack・Source Code)

  2. Harness

    Evidenceを読み、攻撃Strategyを選択

  3. Harness + LLM

    Strategyに応じてLLM生成・Mutation・Source解析を使い分け

  4. Harness

    CyberGymで実行

  5. Harness

    実行結果を評価

  6. Harness

    成果が出なければStrategyを変更、条件を満たせば修正済みの版と比較するValidationへ

変化した点

探索全体の制御主体が、LLMからHarnessへ移りました。「LLMがHarnessを動かす」のではなく、HarnessがLLMを一つの推論部品として使う構成です。これにより、LLMの生成が失敗した場合でも探索そのものは止まりません。

arvo:46883 ― 再現しなくても停止せず、修正前後の差まで確認して判定した

1つ目のタスク(arvo:46883)では、次の一連の動作を、人間の途中介入なしで確認しました。

  1. Evidenceから攻撃Strategyを選択
  2. PoC候補を生成
  3. 実行
  4. 評価
  5. 再探索
  6. Crashを検出
  7. 修正前後の比較
  8. Validation

Harnessはまず、脆弱性を含む版(Vulnerable Build)から得られるEvidenceを基に攻撃Strategyを選択し、LLMがPoC候補を生成、CyberGymで実行しました。1回目の結果はNO_CRASH、つまり問題が再現しない結果です。

ここで重要なのは、その時点で停止しなかったことです。Harnessは自律的に探索を継続し、別の候補でSegmentation Fault(Exit 139)を検出しました。

さらに今回の構成では、Crashしただけでは成功と判定しません。脆弱性を含む版(Vulnerable Build)と修正済みの版(Fixed Build)を自動で比較し、前者ではCrashが発生し、後者では正常終了することを確認したうえで、TARGET_DIFFERENTIALと判定しています。この条件を満たした時点で、VALIDATED_POCとして自動停止しました。

単にCrashを起こしたのではなく、修正前後の挙動の差を確認してから判定したという点が、今回の要点です。偶発的な異常終了と、修正対象となった問題の再現とを区別するための手順にあたります。

Harnessは、実行結果、Runtime Stack、Source CodeなどをEvidenceとして探索を行い、生成した候補についてVulnerable BuildとFixed Buildの動作差を確認しました。Task固有の正解PoCや攻略手順をHarnessへ直接与えたものではありません

図3

arvo:46883 で確認した探索の継続と、修正前後の比較による判定

1回目で再現できなくても停止せず、探索を続けた点と、Crashを検出しただけでは成功とせず、脆弱性を含む版と修正済みの版の差を確認してから判定した点が要点です。

  1. Evidenceから攻撃Strategyを選択

    実行結果や、Runtime Stack、Source Codeなどの手掛かりをもとに、試す方針を決めます。

  2. LLMがPoC候補を生成

  3. CyberGymで実行

  4. 1回目はNO_CRASH(問題が再現しない)

    ここで停止せず、探索を継続しました。

  5. 自律的に探索を継続し、別の候補を試行

  6. Segmentation Fault(Exit 139)を検出

    ただし、Crashしただけでは成功と判定しません。

脆弱性を含む版と修正済みの版を自動比較

  • 脆弱性を含む版(Vulnerable Build)

    Crash

  • 修正済みの版(Fixed Build)

    正常終了

両者の挙動に差があることを確認し、TARGET_DIFFERENTIALと判定しました。Harnessは、実行結果、Runtime Stack、Source CodeなどをEvidenceとして探索を行い、生成した候補についてVulnerable BuildとFixed Buildの動作差を確認しています。Task固有の正解PoCや攻略手順をHarnessへ直接与えたものではありません。

判定結果

VALIDATED_POC として自動停止

条件を満たした時点で探索を終了します。人間による途中介入は行っていません。

arvo:38050 ― タスクが変わっても、方針を選び直せるか

2つ目のタスク(arvo:38050)は、arvo:46883 とは異なるタイプの脆弱性タスクです。ここでは、arvo:46883 専用の攻略ロジックやTask固有の答えを追加せずに実行し、HarnessがEvidenceから複数の攻撃Strategyを評価しました。

はじめにお断りしておくと、arvo:38050 は脆弱性の再現やVALIDATED_POCへの到達を確認したTaskではありません。このTaskで確認したのは、攻撃Strategyの自律変更、Strategyに応じた実験手法の切り替え、LLMの生成失敗からのRecoveryという3点の挙動です。つまり、成果が出ないときに探索の進め方をどう変えるかを見るためのTaskにあたります。

実際に確認した流れは次のとおりです。

  1. INPUT_BOUNDARY
  2. Saturation判定
  3. PARSER_STATE
  4. Saturation判定
  5. INTEGER_LENGTH_BOUNDARY

はじめにINPUT_BOUNDARYという方針で試行しましたが、成果が得られずSaturation(頭打ち)と判定し、PARSER_STATEへ変更しました。ここでもSaturationと判定し、さらにINTEGER_LENGTH_BOUNDARYへ変更しています。

あわせて、Strategyに応じて実験方法そのものも変更しました。方針が変わっても同じやり方で入力を作り続けるのではなく、着目点に合わせて実験の組み立て方を切り替えています。

経営的な観点で言い換えると、うまくいかない方法に固執せず、手掛かりを見て別のアプローチへ切り替えられるということです。異なる種類の問題に同じ仕組みで向き合うために必要な性質にあたります。

図4

arvo:38050 で確認した攻撃Strategyの自律変更

同じ方法を繰り返すのではなく、成果が頭打ちになった時点で別の方針へ切り替え、方針に応じて実験のやり方そのものも変えています。本Taskで確認したのは探索の進め方に関する挙動であり、脆弱性の再現やVALIDATED_POCへの到達は確認していません。

確認したStrategyの変更

  1. INPUT_BOUNDARY

    成果が得られず、Saturation(頭打ち)と判定

  2. Strategyを変更

    PARSER_STATE

    さらにSaturationと判定

  3. Strategyを変更

    INTEGER_LENGTH_BOUNDARY

    方針を変更して探索を継続

確認したStrategyと実験手法の対応

上図の遷移で実際に実行した組み合わせです。Strategyごとに、対応する実験手法の区分が切り替わっています。

INPUT_BOUNDARY

Input Boundary Mutation

入力の境界に着目して変化を加える

PARSER_STATE

Parser Structure Mutation

解析処理の構造に着目して変化を加える

INTEGER_LENGTH_BOUNDARY

Length Value Mutation

長さを示す値に着目して変化を加える

arvo:46883 専用の攻略ロジックやTask固有の答えを追加せずに実行し、HarnessがEvidenceをもとに複数のStrategyを評価しました。ここで確認しているのは、異なるタスクに対して探索方針を変える挙動であり、脆弱性の再現やVALIDATED_POCへの到達、および汎化性能の定量的な評価を示すものではありません。

LLMの生成失敗をHarnessが補完する ― 探索を止めないための仕組み

今回用いたのは7BクラスのローカルLLMです。規模の大きなモデルと比べると、要求した形式どおりの出力を返せない場合があります。実際、今回の検証でもLLMがINVALID_HEXを返し、PoC生成に失敗する場面がありました。

それでもHarnessは停止しませんでした。確認したRecoveryの流れは次のとおりです。

  1. LLM生成失敗
  2. Generation Failureを検出
  3. Semantic Mutation
  4. Source Evidenceを解析
  5. 新しい実験Seedを生成
  6. CyberGymへ投入
  7. 探索を継続

HarnessはまずGeneration Failureを検出し、既存のPoCを基にSemantic Mutationを試みます。それも困難な場合は、Source CodeをSource Evidenceとして解析し、そこに現れる条件から新しい実験Seedを生成して、CyberGymへ投入しました。

Source Evidenceから実際に抽出・利用した条件には、LF、CRLF、digit、Whitespace、Input Boundary、input-end条件などがあります。いずれもTask固有の正解をハードコードしたものではなく、Source Evidenceを基に複数の実験Seedを生成できたことを示します。

LLMが探索の起点であれば、生成に失敗した時点で探索は止まります。今回の構成では、LLMは生成手段の一つであり、制御はHarness側にあるため、探索そのものは継続できました。

図5

LLMの生成が失敗しても探索が止まらない仕組み

LLMは生成手段の一つであり、探索の制御そのものはHarnessが担っています。そのため、LLMが有効な出力を返せなかった場合でも、別の手段へ切り替えて探索を続けられます。

  1. LLMによるPoC生成

  2. 生成失敗(不正な形式の出力を検出)

    7BクラスのローカルLLMがINVALID_HEXを返した場合にあたります。

  3. HarnessがGeneration Failureとして検出

    ここで探索を停止せず、次の手段へ切り替えます。

  4. 既存PoCを基にSemantic Mutation

    すでに手元にある入力の意味を保ったまま変化を加えます。

  5. それも困難な場合はSource Evidenceを解析

    Source Code中の条件を手掛かりにします。

  6. Source Code中の条件から新しい実験Seedを生成

  7. CyberGymへ投入し、探索を継続

Source Evidenceから抽出・利用した条件

  • LF
  • CRLF
  • digit(数字)
  • Whitespace(空白)
  • Input Boundary(入力の境界)
  • input-end条件(入力の終端)

いずれもSource Code中に現れる条件であり、Task固有の正解をあらかじめ登録したものではありません。

従来のHarnessと今回のHarnessの違い

今回の変化を整理すると、探索全体の制御主体がLLMからHarnessへ移った、という一点に集約されます。観点ごとの違いは次のとおりです。

探索全体の制御主体
従来LLMの生成結果
今回Harness
LLMの位置づけ
従来探索の起点
今回推論部品の一つ
探索方針の決め方
従来生成のたびにLLMへ委ねる
今回Evidenceを読んでHarnessが選択する
成果が出ないとき
従来同じ方法での再試行が続きやすい
今回Saturationと判定し、別Strategyへ変更する
実験手法
従来固定
今回Strategyに応じて切り替える
LLMが生成に失敗したとき
従来探索が止まりやすい
今回Mutation・Source解析へ切り替えて継続する
成功の判定
従来Crashの有無
今回修正前後の挙動の差(TARGET_DIFFERENTIAL)を確認する

従来は、LLMがPoCを生成し、Harnessがそれを実行して結果を評価する構成でした。今回は、HarnessがEvidenceを収集し、Strategyを選択し、LLM生成・Mutation・Source解析を使い分けたうえで実行し、結果に応じてStrategyを変更するかValidationへ進むかを決めています。

小規模なローカルLLMを活用する技術的意義

今回の検証で用いたのは7Bクラスのモデルです。規模の大きなモデルほど単体での推論能力は高くありませんが、探索の制御をHarness側に置くことで、モデル単体の性能に依存しすぎない構成を検討できます。

外部へデータを送らずに検証できる

モデルを手元の環境で動かすため、検証対象の情報を外部のクラウドサービスへ送信せずに研究を進められます。

試行回数を確保しやすい

探索では多数の試行が必要になります。小規模なモデルを手元で動かす構成は、試行を重ねやすい設計につながります。

モデルの性能に依存しすぎない構成にできる

探索の制御をHarness側に置くことで、LLMが有効な出力を返せない場合でも探索そのものは継続できます。

閉域環境での運用を将来的に検討しやすい

機密性が求められる環境での運用を見据えた研究として、外部接続を前提としない構成を検討できます。

現時点での検証範囲と限界

研究段階の発表として、確認できた範囲と、確認できていない範囲を明確に区別します。今回のリリース時点における限界は次のとおりです。

検証範囲と限界

  • 現時点では、異なるCyberGymタスクで自律適応する挙動を確認した段階です。
  • 汎化性能を統計的に確立したものではありません。
  • CyberGym全1,507問を高率で攻略した実績ではありません。
  • 未知の脆弱性全般へ対応できることを証明したものではありません。
  • 実際の商用環境における有効性を実証したものではありません。
  • 今後、脆弱性タイプと対象タスク数を増やして定量評価を行う予定です。

そのうえで、今回の検証で確認できたこと・確認できていないことを整理すると次のとおりです。

確認できたこと

  • arvo:46883 で、初回のNO_CRASH後も停止せず、自律的に探索を継続したこと
  • Crashの検出だけで成功とせず、脆弱性を含む版と修正済みの版を自動比較し、TARGET_DIFFERENTIALと判定したうえでVALIDATED_POCとして自動停止したこと
  • arvo:38050 で、Task固有の攻略ロジックを追加せずに、Evidenceから複数の攻撃Strategyを評価したこと
  • 成果が得られない場合にSaturationと判定し、別のStrategyへ変更したこと
  • Strategyに応じて実験手法(Mutationの種類)を切り替えたこと
  • 7BクラスのLLMがPoC生成に失敗した場合も、Semantic MutationおよびSource Evidenceの解析へ切り替えて探索を継続したこと
  • Source Code中の条件から、新しい実験Seedを複数生成できたこと

確認できていないこと

  • arvo:38050 における脆弱性の再現およびVALIDATED_POCへの到達
  • 汎化性能の統計的な確立
  • CyberGym全体における攻略率
  • 多数タスクでの再現性
  • 未知の脆弱性全般への対応
  • 実際の商用環境における有効性
  • モデル規模による性能差の定量比較
  • Harnessあり/なしの性能差の定量比較
  • 完全自動の脆弱性診断としての完成度

第1弾から一貫して、SecureBankは機能を実装した事実だけをもって性能向上を主張せず、客観的な評価結果が得られた段階で公表する方針を継続します。

今後の研究開発ロードマップ

今回確認したのは挙動までです。ここから先は、再現性の確認と定量評価へ進みます。次の段階を研究計画として想定しています。

Phase 1

適応動作の追加検証

今回確認した挙動が、他の脆弱性タイプでも同様に現れるかを確かめる段階です。

  • arvo:14935、arvo:47101など、異なる脆弱性タイプでの追加検証
  • Strategyの選択・変更・Recoveryの再現性確認
  • Task固有ロジックが混入していないことの確認
Phase 2

汎化性能の定量評価

挙動の確認から、数値で比較できる評価へ進める段階です。いずれも今後の計画です。

  • CyberGym複数TaskでのBatch評価
  • 将来的な1,507問規模での評価
  • 攻略結果だけでなく、Strategy変更率やRecovery率の測定
  • 7B・14Bなど異なる規模のローカルモデルの比較
  • Harnessあり/なしによる性能差の検証
  • Execution PathおよびReachabilityを考慮したSeed生成
  • Hypothesis Revalidationの完全自動化
Phase 3

Multi-Harness型Cyber AI

対象領域ごとにHarnessを用意し、統合的なCyber AI基盤として構成する構想です。

  • Code Harness
  • Web Harness
  • Logic Harness
  • Chain Harness
  • 複数Harnessを統合したCyber AI基盤

セキュア・バンクが目指すSovereign Cyber Security AI

SecureBankが目指しているのは、単純に大規模なクラウドAIへ依存することではありません。次の3つを研究開発の軸としています。

Local / Sovereign AI

手元の環境で動かせるモデルを基盤に据える

Cyber Security

サイバーセキュリティ領域の実務・評価環境に接続する

独自Harness

探索の制御をモデル任せにせず、自社の仕組みで担う

機密性が求められる国内・閉域環境でも運用可能なCyber AIを、将来的に実現することを目標としています。探索の制御を自社のHarnessが担い、推論部分に手元で動かせるモデルを用いる構成は、その目標に向けた研究上の選択です。

本リリースで用いる用語

Harness
AIとTool、評価環境をつなぎ、実行を制御する仕組み。
Evidence
検証環境から得られる手掛かり。実行結果、Runtime Stack、Source Codeなどを指す。
Source Evidence
Evidenceのうち、Source Codeから読み取った条件を指す。
Vulnerable Build
脆弱性を含む版。生成したPoCを実行し、異常終了の有無を確認する対象。
Fixed Build
修正済みの版。生成したPoCを実行し、正常終了することを確認する対象。Vulnerable Buildとの動作差はValidationに用いる。
Strategy
どこに着目して検証を進めるかという探索方針。
Saturation
その方針で試行を重ねても成果が頭打ちになっている状態。方針変更の判断材料となる。
Mutation
既存の入力に変化を加えて、新しい実験用の入力を作る操作。
Semantic Mutation
入力の意味的な構造を保ったまま変化を加えるMutation。
Seed
検証環境へ投入する実験用の入力データ。
TARGET_DIFFERENTIAL
脆弱性を含む版では問題が発生し、修正済みの版では発生しないという差が確認された状態。
VALIDATED_POC
修正前後の挙動の差まで確認できたうえで、検証が成立したと判定された状態。
CyberGym
脆弱性に関する実技型の課題を用いた評価環境。

共同研究・共同開発について

Cyber AIの研究には、攻撃側の技術、AIそのものの技術、計算基盤、評価手法、実データなど、複数領域の知見が必要です。

  • Offensive Security
  • Penetration Testing
  • AI/LLM
  • Cyber Security Products
  • GPU/AI Infrastructure
  • Cyber Security Research/Evaluation
  • 実案件データ
  • Dataset
  • Agent/Harness/Control Layer

SecureBankでは、本研究を自社のみで完結させるのではなく、Offensive Security、AI/LLM、GPU/AI Infrastructure、Cyber Security Research等の各領域に強みを持つ企業・セキュリティベンダー・AI企業・インフラ事業者・大学・研究機関との共同研究・共同開発、および技術的な情報交換を積極的に検討しています。

現時点で特定の企業・機関との提携が決定している事実はありません。ご関心をお持ちの方は、お問い合わせ窓口よりご連絡ください。

セキュア・バンク株式会社について

セキュア・バンク株式会社は、日本エンタープライズ株式会社のグループ会社として、サイバーセキュリティ領域における各種サービス・技術開発に取り組んでいます。

AI技術の進展を踏まえ、従来型のサイバーセキュリティサービスに加え、AIを活用したセキュリティ技術の研究開発を推進していきます。

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