セキュア・バンク株式会社(本社:東京都、以下「SecureBank」)は、これまでの独自Cyber AI研究で構築してきた探索・検証・Evidence管理の考え方を、顧客向けの自動セキュリティ診断プロトタイプ「Mini Dike」へ接続したことをお知らせします。
今回の開発マイルストーンは、研究のための評価環境の中だけで完結する話ではありません。診断対象のURLを入力すると、Recon、分析入力生成、仮説生成、自律検証、Finding生成、レポート生成までを一連の流れとして実行する試作版を構築し、人間による途中の操作を必要とせずに完走することを確認したという点が要点です。
Mini Dikeは、独自Cyber AI研究の成果を、将来の診断サービスへの活用に向けて実装している、国内で独自開発中のAIセキュリティ診断基盤の試作版です。今回の発表は研究開発の進捗に関するものであり、既存サービスの提供内容に関する発表ではありません。
今回確認した範囲
2026年9月時点で、許可されたローカルのデモ環境を対象に確認した内容です。
確認した対象
- 対象
- Mini Dike 試作版
- 実行環境
- 許可されたローカルのデモ環境
- 人間の途中操作
- なし
- 動作確認した環境
- 一般的なWindows PCとDocker
確認した一連動作
- 入力
- 診断対象のURL
- 探索
- 公開SurfaceのReconとAttack Pathの整理
- 判定
- Evidenceに基づく確認済みFindingの生成
- 出力
- 日本語HTMLレポートの自動生成
デモ環境で確認した数値
- Attack Path
- 3 Hop/4 Surface/7 Evidence
- 確認済み指摘事項
- HIGH 1件/MEDIUM 2件
- デモ統合受入試験
- 17項目すべて合格
- 数値の位置づけ
- デモ環境での動作確認
Mini Dike開発の背景 ― 研究の成果を、診断業務で使える形へ
SecureBankは2026年8月より、Open Weightモデルを基盤としたサイバーセキュリティ領域特化型AI「Cyber AI」の独自研究開発を進めてきました。ここまでに積み上げてきた考え方は、次のとおりです。
- Evidenceに基づく探索
- 実行結果を踏まえた再検証
- 有益な再検証と停滞の区別
- Harnessによる探索の制御
これらはいずれも、評価環境の中で確かめてきたものです。今回のMini Dikeは、その考え方を、実際の診断業務で利用できる形へ近づける取り組みにあたります。
自動診断で問題になりやすいのは、指摘候補が大量に並ぶ一方で、それぞれがどこまで確かなのかが分からない、という状態です。Mini Dikeでは、単に指摘候補を列挙するのではなく、探索経路、検証結果、Evidence、判定、レポートまでを一貫して扱うことを設計の前提としています。どの指摘が、どの検証結果に基づいて確認済みと判断されたのかを、レポートからたどれる構成です。
あわせて、中堅・中小企業でも利用しやすい、小型で国内運用可能な仕組みを目指しています。今回の試作版は、専用の大規模な計算基盤ではなく、一般的なWindows PCとDocker環境で動作を確認しました。
Mini Dikeは、国内・閉域環境での運用を視野に入れた「Sovereign Cyber Security AI」構想の一部として開発しているものです。
今回構築した診断フロー
今回の試作版では、診断対象のURLを入力してからレポートが生成されるまでを、次の一連の流れとして実行します。
- URL入力
- Recon
- 分析入力生成
- 仮説生成
- 自律検証
- Finding生成
- レポート生成
はじめに、診断対象の公開Surfaceを探索します(Recon)。探索で得られた情報は、以降の判断に使える形へ整理され(分析入力生成)、確かめるべき観点が立てられます(仮説生成)。
続いて、その観点を実際に確かめ、結果をEvidenceとして記録します(自律検証)。ここで得られたEvidenceに基づいて、Attack Pathの整理・可視化と、確認済みFindingの確定を行い、最後に日本語のHTMLレポートを生成します。
人間が行うのは、診断対象のURLを指定するところまでです。今回のデモ環境では、そこからレポート生成までを、途中の操作なしで完走しました。
図1
Mini Dike 試作版で構築した診断フロー
許可されたローカルのデモ環境において、URL入力からレポート生成までを、人間の途中操作なしで一連の流れとして実行しました。
STEP 1
診断対象のURLを入力
人間が行うのは、診断対象のURLを指定するところまでです。
STEP 2
Recon(公開Surfaceの探索)
診断対象として公開されている入口を探索し、確認できた範囲を整理します。
STEP 3
分析入力の生成
探索で得られた情報を、以降の判断に使える形へ整理します。
STEP 4
仮説生成
整理した情報をもとに、確かめるべき観点を立てます。
STEP 5
自律検証
立てた観点を実際に確かめ、その結果をEvidenceとして記録します。
STEP 6
確認済みFindingの生成
Evidenceで裏付けられた指摘事項だけを、確認済みとして確定します。
STEP 7
レポート生成
確認済みの指摘事項を、経営者向け・技術者向けの日本語HTMLレポートにまとめます。
本図が示すのは、処理の順序までです。
自動生成する顧客向けレポートの構成
レポートは、経営層と技術担当者の双方が読めるよう、次の要素を含む日本語のHTMLとして自動生成します。掲載するのは、確認済みの指摘事項だけです。
重要度別の件数
確認済みの指摘事項を重要度ごとに集計し、全体像を最初に示します。
経営者向けの総合評価
専門用語に立ち入らず、現状をどう受け止めればよいかを整理して記載します。
想定される事業影響
確認できた指摘事項が事業にどう関わりうるかを、想定として記載します。
優先対応
先に着手すべき事項を、判断材料とともに提示します。
技術的な推奨対応
技術担当者が実際の対処を検討できる粒度で記載します。
Evidence Chain
その指摘事項が、どの検証結果に基づいて確認済みと判断されたかをたどれるようにします。
今回の確認結果
許可されたローカルのデモ環境において、次の内容を確認しました。
- 3 Hop/4 Surface/7 Evidence:デモ環境で確認したAttack Pathの規模です。到達できた経路のつながりが3 Hop、探索できた公開Surfaceが4件、経路の裏付けとして用いた検証結果の記録が7件でした。到達できたこと自体は、脆弱性の確定を意味しません。
- HIGH 1件/MEDIUM 2件:Evidenceで裏付けられ、確認済みとしてレポートへ反映した指摘事項の件数です。意図的に脆弱な状態を用意したデモ環境での結果です。
- デモ統合受入試験 17/17:試作版が想定どおりに動作するかを確かめる、機能・統合の受入試験17項目すべてに合格しました。
あわせて、人間による途中の操作を必要とせずURL入力からレポート生成まで完走したこと、および一般的なWindows PCとDocker環境で動作したことを確認しています。
図2
デモ環境で確認した数値と、その意味・読み方
各数値が何を数えたものかと、注意して読むべき点を併記しています。
以下はすべて、許可されたローカルのデモ環境で確認した数値です。実環境における検出性能を示すものではありません。
3Hop
Attack Path の経路数
Evidenceに基づいて整理した、到達できた経路のつながりの数です。到達できたこと自体は、脆弱性の確定を意味しません。
4Surface
探索できた公開Surface
診断対象として公開されている入口のうち、探索で確認できた数です。
7Evidence
経路の裏付けとなる記録
Attack Pathの整理に用いた、検証結果の記録の数です。
1件
HIGH の確認済み指摘事項
Evidenceで裏付けられ、確認済みとしてレポートへ掲載した指摘事項の件数です。
意図的に脆弱な状態を用意したデモ環境での結果。一般的な検出性能を示す数字ではありません
2件
MEDIUM の確認済み指摘事項
Evidenceで裏付けられ、確認済みとしてレポートへ掲載した指摘事項の件数です。
意図的に脆弱な状態を用意したデモ環境での結果。一般的な検出性能を示す数字ではありません
17 / 17
デモ統合受入試験の合格項目
試作版が想定どおりに動作するかを確かめる、機能・統合の受入試験項目の合格数です。
脆弱性の検出性能や精度を示す数字ではありません
デモ環境は、動作確認のために意図的に脆弱な状態を用意したものです。実在企業や公開Webサイトを診断した結果ではありません。
過大判定を避ける安全設計
自動診断では、確からしくない指摘まで脆弱性として扱ってしまうと、対応の優先順位を誤らせる原因になります。Mini Dikeでは、確定できないものを確定しないための設計を組み込んでいます。
到達経路の確認と、脆弱性の確定を分離する
たどり着けたこと自体は、脆弱性が存在することの確定とは別に扱います。Attack Pathの整理と、Findingの確定を分けています。
Evidenceが不足する場合は確定しない
裏付けが足りない場合は「VALIDATION_INCOMPLETE」「UNCONFIRMED」として扱い、脆弱性としては確定しません。
確認済みの指摘事項だけをレポートへ掲載する
未確定のものは顧客向けレポートの指摘事項に含めません。指摘の量ではなく、確からしさを優先する設計です。
最終的な事業影響の確定には技術担当者の確認が必要
レポートに記載する事業影響は想定であり、最終的な判断は技術担当者による確認を前提としています。
指摘の件数を増やすことよりも、掲載した指摘がどこまで裏付けられているかを明確にすることを優先する設計です。
図3
過大判定を避けるための判定の分離
到達できた経路と、脆弱性として確認できた指摘事項を分けて扱い、Evidenceが不足する場合は確定しません。
自律検証の結果とEvidence
到達できた経路
探索の結果、たどり着けたことが確認できた範囲です。Attack Pathとして整理・可視化します。
- 公開Surfaceの探索で確認できた入口
- Evidenceで裏付けられた経路のつながり
- 到達できたこと自体は、脆弱性の確定を意味しない
脆弱性として確認できた指摘事項
検証の結果、Evidenceで裏付けられた指摘事項だけを、確認済みのFindingとして確定します。
- 重要度(HIGH / MEDIUM など)を付与
- 顧客向けレポートへ掲載する対象
- 経路の到達確認とは別の判断として扱う
Evidenceが不足する場合は確定しない
VALIDATION_INCOMPLETE
検証を最後まで完了できなかった場合の扱いです。
UNCONFIRMED
裏付けとなるEvidenceが足りず、確定できない場合の扱いです。
これらは脆弱性として確定せず、顧客向けレポートの指摘事項には含めません。
顧客向けレポート
確認済みの指摘事項だけを掲載
最終的な事業影響の確定には、技術担当者による確認が必要です。
今後の開発
今回確認したのは試作版の一連動作までです。ここから先は、対応範囲の拡張と、繰り返し確かめる評価へ進みます。次の項目を開発計画として想定しています。
対応可能なWeb入力・検証パターンの拡張
扱える入力の種類と、確かめられる観点を段階的に広げていきます。
Harnessによる探索・再検証制御の継続改善
これまでのCyber AI研究で取り組んできた探索制御を、診断フローの側でも改善していきます。
CyberGymを活用した実技型評価
実技型の評価環境を用いて、Mini Dikeとしての評価に取り組みます。Mini DikeとしてのCyberGymとの統合評価、およびCyberGymを用いた診断性能の実証は未完了です。
複数課題での再現性・安定性・精度評価
単発の動作確認ではなく、複数の課題で繰り返し確かめる評価へ進めます。
小型化および国内・閉域環境での運用検証
外部接続を前提としない構成での運用について、検証を進めます。
顧客環境への適用を見据えた安全性・レポート品質の改善
実際の診断業務で使える水準を目標に、安全性とレポートの質を高めます。
現時点の制限
開発段階の発表として、確認できた範囲と、確認できていない範囲を明確に区別します。現時点で確認しているのは、許可されたローカルのデモ環境において、URL入力から探索、検証、脆弱性判定、顧客向けレポート生成までの一連の処理が動作することです。実環境における網羅的な脆弱性検出性能、既存診断サービスとの性能比較、CyberGym課題に対するMini Dikeとしての汎化性能を確認したものではありません。
あわせて明確にしておく点
- 実在企業や公開Webサイトに対する診断実績ではありません。
- あらゆるWebサイトを診断できること、脆弱性を漏れなく発見できることを示すものではありません。
- 商用版の提供開始、開発の完了、正式リリースを示すものではありません。
- 人間の専門家による確認を不要にするものではありません。
そのうえで、今回確認できたこと・確認できていないことを整理すると次のとおりです。
確認できたこと
- 診断対象のURLの入力だけで、Recon、分析入力生成、仮説生成、自律検証、Finding生成、レポート生成までを一連の流れとして実行し、人間による途中の操作なしで完走したこと
- 診断対象の公開Surfaceを探索し、Evidenceに基づくAttack Pathを整理・可視化できたこと(3 Hop・4 Surface・7 Evidence)
- 到達できた経路と、脆弱性として確認できた指摘事項を分離して扱えたこと
- Evidenceが不足する場合に、脆弱性を確定せず未確定として扱う設計が動作したこと
- 確認済みの指摘事項だけを顧客向けレポートへ掲載できたこと(HIGH 1件・MEDIUM 2件)
- 重要度別件数、経営者向け総合評価、想定される事業影響、優先対応、技術的な推奨対応、Evidence Chainを含む日本語HTMLレポートを自動生成できたこと
- デモ統合受入試験17項目すべてに合格し、一般的なWindows PCとDocker環境で動作したこと
確認できていないこと
- 実環境における網羅的な脆弱性検出性能、および脆弱性を漏れなく発見できること
- 既存の診断サービスとの性能比較
- Mini DikeとしてのCyberGymとの統合評価、およびCyberGymを用いた診断性能の実証
- CyberGym課題に対するMini Dikeとしての汎化性能
- あらゆるWebサイトを診断対象にできること、および複数課題における再現性・安定性・精度
- 商用サービスとしての提供開始、および国内・閉域環境における商用運用
第1弾のプレスリリースから一貫して、SecureBankは機能を実装した事実だけをもって性能を主張せず、客観的な評価結果が得られた段階で公表する方針を継続します。
本リリースで用いる用語
- Mini Dike
- 独自Cyber AI研究の成果を、将来の診断サービスへの活用に向けて実装している、国内で独自開発中のAIセキュリティ診断基盤の試作版。
- Recon
- 診断対象として公開されている範囲を調べる、最初の探索工程。
- Surface
- 診断対象のうち、外部から到達できる入口にあたる部分。
- Attack Path
- 探索の結果として整理される、到達できた経路のつながり。到達できたこと自体は脆弱性の確定を意味しない。
- Hop
- Attack Pathを構成する、経路のつながりの単位。
- Evidence
- 検証環境から得られる手掛かり。実行結果などの記録を指し、判定の裏付けに用いる。
- Evidence Chain
- 指摘事項が、どの検証結果に基づいて確認済みと判断されたかをたどれるようにした記録のつながり。
- Finding
- 検証の結果として整理される指摘事項。Evidenceで裏付けられたものを確認済みとして扱う。
- VALIDATION_INCOMPLETE
- 検証を最後まで完了できず、脆弱性として確定しない状態。
- UNCONFIRMED
- 裏付けとなるEvidenceが不足し、脆弱性として確定しない状態。
- デモ統合受入試験
- 試作版が想定どおりに動作するかを確かめる、機能・統合の受入試験。脆弱性検出性能や精度を測るものではない。
- Harness
- AIとTool、検証環境をつなぎ、実行を制御する仕組み。
- CyberGym
- 脆弱性に関する実技型の課題を用いた評価環境。
- Sovereign Cyber Security AI
- 国内・閉域環境での運用を視野に入れたセキュリティAIの構想。現時点では将来構想であり、実現済みの運用形態ではない。
セキュア・バンク株式会社について
セキュア・バンク株式会社は、日本エンタープライズ株式会社のグループ会社として、サイバーセキュリティ領域における各種サービス・技術開発に取り組んでいます。
AI技術の進展を踏まえ、従来型のサイバーセキュリティサービスに加え、AIを活用したセキュリティ技術の研究開発を推進していきます。
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