セキュア・バンク株式会社(本社:東京都、以下「SecureBank」)は、国内で独自開発を進める国産AI脆弱性診断基盤「Sovereign Dike(ソブリン・ディーケ)」について、商用運用を想定した実行環境の配置を進め、構成要素の配置と検証を実施しました。また、実行基盤を構成する監視・実行管理機構の起動と有効化を確認しました。
あわせて、診断範囲、実施承認、実行量、二重実行、証拠管理、納品前確認などの安全管理機能を開発し、検証環境で確認を進めています。URL入力と同意・開始操作を起点に内部の実行管理を自動化する「Start-on-Click」方式はオフライン環境で動作を検証し、経営者向け・技術者向けのPDFレポートの生成も検証環境で確認しました。これまでの研究開発・技術検証の段階から、企業が安心して利用できる診断サービスの提供に向けた基盤づくりへと、取り組みを広げています。
※商用運用を想定した実行環境で、実際のWebサイトを対象に一連の診断を最後まで実行したことは、まだ確認していません。本リリースは商用サービスの提供開始を示すものではありません。到達範囲は「現時点での到達範囲」にまとめています。
今回の3つの進展
開発の背景
Webサイトや業務システムを狙うサイバー攻撃は、企業の規模を問わず広がっています。一方で、脆弱性診断を担うセキュリティ専門人材は不足しており、特に中堅・中小企業にとっては、専門家による診断を定期的に受けることが、費用や体制の面で負担になりやすいのが実情です。
SecureBankは、この課題に対し、AIを活用して脆弱性診断の作業を自動化・効率化する「Sovereign Dike」の研究開発を進めてきました。2026年9月にはローカル検証環境で一連の技術検証を完了し、10月には社内模擬Web環境で、Webサイトの探索からAIによる分析、レポート作成までが一連で動作することを確認しています。
一方で、技術として「動く」ことと、企業が安心して「使える」サービスとして提供することの間には、大きな隔たりがあります。診断を安定して実行するための環境、許可された範囲だけを安全に診断するための管理、専門知識がなくても利用できる操作方法が欠かせません。今回の取り組みは、この隔たりを埋めるためのものです。
今回の技術的な進展
進展① 商用運用を想定した実行環境の整備
これまでの技術検証は、研究開発用の環境で行ってきました。今回、Sovereign Dikeの診断を商用運用を想定した環境で実行するための基盤の配置を進め、構成要素の配置と検証を実施しました。あわせて、実行基盤を構成する監視・実行管理機構の起動と有効化を確認しています。
- 配置・検証を実施
Production Runtime
商用運用を想定して整備している、Sovereign Dikeの診断を実行するための環境です。配置時点では、診断はまだ開始していません。
- 起動・有効化を確認
Broker Observer
実行基盤を構成する監視の仕組みです。
- 起動・有効化を確認
Execution Manager
実行基盤を構成する、診断の実行を管理する仕組みです。
研究開発の段階から、商用運用を想定した実行環境の整備へと進んだことが、今回の中心となる進展です。今後は、この環境で、検証の許可を得た実際のWebサイトを対象とした一連の診断を検証していきます。
進展② 診断の安全管理機能
AIによる脆弱性診断を企業のWebサイトに対して行うには、「許可された対象だけを」「許可された範囲で」「相手のシステムに負担をかけずに」診断し、必要なときには確実に止められることが前提になります。Sovereign Dikeでは、診断範囲、実施承認、実行量、二重実行、証拠管理、納品前確認などの安全管理機能を開発し、検証環境で確認を進めています。未確認の範囲は、項目ごとに示しています。
- 検証環境で確認中
診断対象Scopeの制限
診断してよい対象と範囲(Scope)をあらかじめ定め、その範囲の外へは診断を進めないための仕組みです。
- 検証環境で確認中
所有・管理権限と同意(Consent)の紐付け
診断の申込みを、対象サイトの所有・管理権限の申告と、診断への同意(Consent)に紐付けて扱うための仕組みです。
所有・管理権限を独立に自動で証明する仕組みは未確認です。
- 検証環境で確認中
診断実施の承認
診断の範囲や条件について承認を得てから、診断を開始するための仕組みです。
- 検証環境で確認中
実行Budget・リクエスト数の制限
実行量の上限(Budget)と、対象のWebサイトへ送るリクエストの数に上限を設け、相手のシステムに過度な負荷をかけないための仕組みです。
本番環境での負荷制御は未確認です。
- 検証環境で確認中
二重実行の防止
同じ診断が誤って重複して実行されないようにするための仕組みです。
- 検証環境で確認中
Emergency Stop(緊急停止)
想定外の状況が起きた場合などに、診断を直ちに止めるための仕組みです。
Live実行中の緊急停止は未確認です。
- 検証環境で確認中
Evidence(判断根拠)の管理
診断結果の根拠となる情報を取得・保存し、何を根拠にそう判断したのかを後からたどれるようにします。
- 検証環境で確認中
Human Reviewと納品制御
AIが作成したレポートをそのまま納品せず、当社の担当者の確認が完了するまで納品できないようにするための仕組みです。
お客様への納品までは未確認です。
※「検証環境で確認中」は、実装を進め、当社の検証環境(オフライン)で動作の確認を進めているものです。商用実行環境や実際のWebサイトでの実証を示すものではありません。
進展③ 操作を簡素化する「Start-on-Click」方式
脆弱性診断の実行には、本来、診断の設定や実行の管理など専門的な操作が伴います。Sovereign Dikeでは、URL入力と同意・開始操作を起点に、内部の実行管理を自動化する「Start-on-Click」方式を開発し、オフライン環境で動作を検証しました。URLの入力、診断への明示的な同意、開始操作から、内部の実行IDの生成、診断処理、後片付け(Cleanup)までを自動で処理する流れを確認しています。開始操作が二重に行われた場合に、診断が重複して実行されないことも確認しました。
専門的な操作を減らすことで、セキュリティの専門家が社内にいない企業でも利用しやすい診断サービスを目指しています。なお、今回の検証はオフライン環境で行ったもので、お客様向けの画面で実際のWebサイトを診断したものではなく、提供を開始したものでもありません。
経営者向け・技術者向けPDFレポートの生成を確認
外部と切り離した検証環境で、経営者向け・技術者向けのPDFレポートの生成を確認し、レポートの記載内容と根拠となる情報(Evidence)との紐付けも検証しました。2026年10月14日の発表時点では日本語PDFレポートを開発中としていましたが、その後の開発により、10月19日に検証環境での生成を確認したものです。
この検証では外部のAIを呼び出さず、あらかじめ用意した検証用のデータを用いています。担当者による確認(Human Review)は完了しておらず、レポートの納品も行っていません。今後、商用化に向けた接続検証と品質改善を進めます。
図1
Sovereign Dikeが目指す診断の流れ
URLの入力から納品までを、専門的な操作を減らした一連の流れとして提供することを目指しています。工程ごとに、現在の段階を示しています。
- 1
URLの入力と、同意・開始操作
オフライン環境で検証診断するWebサイトのURLを入力し、診断に同意して開始します。以降の実行管理は自動で行います(Start-on-Click方式)。
- 2
Webサイトの探索
これまでの検証で動作承認された範囲の中で、Webサイトのページや入口を自動で探索します。
- 3
証拠情報(Evidence)の取得
これまでの検証で動作診断の根拠となる情報を取得し、後からたどれる形で保存します。
- 4
AIによる分析
これまでの検証で動作取得した証拠情報をAIが分析し、確認すべき点を整理します。
- 5
レポートの作成
これまでの検証で動作経営者向け・技術者向けのレポートを作成します。
- 6
担当者による確認(Human Review)と納品
オフライン環境で検証担当者の確認が完了するまで、レポートを納品できないようにします。お客様への納品までは未確認です。
「これまでの検証で動作」は、2026年10月14日に発表した社内模擬Web環境での動作検証で一連に動いた工程、「オフライン環境で検証」は当社の検証環境で動作を検証した工程です。商用運用を想定した実行環境で、この流れを実際のWebサイトに対して最後まで実行したことは、まだ確認していません。
これまでの検証で確認している技術基盤
今回の進展は、これまでに公表してきた次の技術検証の成果の上に成り立っています。いずれも今回の新しい成果ではなく、既に発表済みの到達点です。
Web探索からレポート作成・完了処理までの一連の動作
URLを起点とした探索、証拠情報(Evidence)の取得、AIによる分析、診断候補(Finding)の整理、経営者向け・技術者向けのレポート作成、後片付け(Cleanup)までが、一連の処理として動作することを確認しています。
2026年10月14日発表/社内模擬Web環境でのLive検証
AIによる複数段階の処理
AIが検証結果を確認し、次に何を調べるべきかを判断して再び検証へ戻る処理について、その制御の流れを確認しています。
2026年10月14日発表/Offline環境の統合テスト
監査記録と検証処理を含む一連の実行
過去の実行結果を引き継がない新しい状態から、監査記録(Audit)の作成と検証処理までを含む一連の実行を完了しています。
2026年9月30日発表/ローカル検証環境
※検証の環境はそれぞれ異なります(ローカル検証環境、社内模擬Web環境、Offline環境の統合テスト)。今回整備を進めている商用運用を想定した実行環境での検証とは別のものです。
Sovereign Dikeの特徴
Sovereign Dikeは、AIモデルだけで脆弱性を診断する仕組みではありません。AIの実行や判断を制御する独自の仕組み(Harness)と、安全管理・根拠の記録を組み合わせた診断基盤として開発しています。
AIによる脆弱性診断の自動化
Webサイトの探索から、根拠となる情報の取得、AIによる分析、レポートの作成までを、一連の処理として自動で実行できる診断を目指しています。
スキャンに「AIの分析・判断」を組み合わせる
あらかじめ決めた項目を順番に確認するだけでなく、得られた情報をもとにAIが分析し、次に何を確認すべきかを判断する方向で開発を進めています。
Evidence(判断根拠)に基づく診断結果
診断結果には、その判断の根拠となる情報を紐付けます。AIの推論だけで結論を出さず、根拠をたどれる形で結果をお届けすることを重視しています。
AIモデルの進化を活かし、診断制御技術は自社に蓄積
AIモデルだけに頼るのではなく、AIの実行や判断を制御する独自の仕組み(Harness)を組み合わせています。進化を続けるAIモデルを活用しながら、診断をどう進め、どこで止め、何を根拠とするかという制御の技術を自社で蓄積します。
国内での独自開発により、海外プラットフォームへの依存を低減
診断の中核となる制御・安全管理・根拠の管理・レポート作成などの仕組みを、国内で独自に開発・管理しています。特定の海外プラットフォームに診断全体を委ねない構成を目指しています。
将来の継続診断・顧客環境内での運用・小型化を視野に
一度きりではない継続的な診断、お客様の環境の中での運用、より小さな計算資源での稼働を、将来の展開として視野に入れています。
現時点での到達範囲
2026年10月19日までの開発記録で確認していること
- 商用運用を想定した実行環境について、構成要素の配置と検証を実施したこと(配置時点では診断は未開始)
- 実行基盤を構成する監視・実行管理機構の起動と有効化を確認したこと
- 安全管理8項目の実装を進め、オフライン環境での検証を進めていること
- Start-on-Click方式について、URL入力・同意・開始操作から診断処理・後片付けまでの流れと、開始操作の重複による二重実行の防止を、オフライン環境で検証したこと
- 隔離された検証環境で、経営者向け・技術者向けのPDFレポートの生成と、根拠(Evidence)との紐付けを確認したこと
まだ実施・確認していないこと
- 商用実行環境で、実際のWebサイトを対象に一連の診断を最後まで実行すること(未確認)
- 所有・管理権限の独立した自動証明、本番環境での負荷制御、Live実行中の緊急停止、お客様へのレポート納品
- 顧客向けの画面での、Start-on-Click方式による実際のWebサイトの診断
- PDFレポートの商用化に向けた接続検証と品質改善(今回の生成確認は、外部のAIを呼び出さず検証用データを用いたもの)
- 商用サービスとしての提供
本リリースが示すものではないこと
- 商用サービスの提供開始や、商用での稼働開始を示すものではありません。
- 実行基盤の完成を示すものではありません。今回は、商用運用を想定した実行環境の整備が進んだ段階です。
- 本番環境・実際のWebサイトでの診断の成功を示すものではありません。
- 検証環境・オフライン環境での確認は、商用実行環境や実際のWebサイトでの実証を示すものではありません。
- 脆弱性を発見・確定したことや、実在するシステムへの侵入に成功したことを示すものではありません。
- 診断処理を国内で完結させる構成を実現したことを示すものではありません。
これまでのリリースと同様に、SecureBankは確認できた範囲と今後の予定を区別して公表する方針を継続します。
今後の商用化に向けた展開
SecureBankは、セキュリティ専門人材の不足という社会課題に対し、AIを活用した脆弱性診断を通じて、中堅・中小企業を含む幅広い企業が利用しやすいセキュリティ対策の実現を目指しています。国内で独自に開発するAIセキュリティ技術の事業化に向けて、次の取り組みを進めていく予定です。
- 1
商用実行環境での一連の診断の検証予定
今回整備を進めている実行環境で、検証の許可を得た実際のWebサイトを対象に、URL入力からレポート作成までの一連の診断を検証する予定です。
- 2
安全管理機能・Start-on-Click方式・PDFレポートの完成度向上予定
検証環境で確認を進めている安全管理機能、操作方式、PDFレポートについて、商用化に向けた接続検証と品質改善を重ねていきます。
- 3
実証実験・技術連携の推進予定
範囲と条件を限定した実証実験や、パートナー企業との技術連携を進めていきます。
- 4
中堅・中小企業でも利用しやすい診断サービスの提供予定
専門人材の確保が難しい企業でも利用しやすい形での、診断サービスとしての提供を目指します。
- 5
継続診断サービスへの展開予定
Webサイトの更新に合わせて定期的に確認できる、継続的な診断サービスへの展開を検討しています。
内容や順序、時期は検証の結果により変更となる可能性があります。
技術補足:本リリースで用いる用語
- Production Runtime
- 商用運用を想定して整備している、診断を実行するための環境。
- 監視・実行管理機構
- 実行基盤を構成する、監視の仕組み(Broker Observer)と、診断の実行を管理する仕組み(Execution Manager)。
- Start-on-Click方式
- URLの入力と、診断への同意・開始操作を起点に、内部の実行管理を自動で処理する操作方式。
- オフライン検証
- 実際のWebサイトや外部のサービスに接続しない、当社の検証環境で動作を確認すること。
- Scope
- 診断してよい対象と範囲。
- Emergency Stop
- 実行中の診断を直ちに止めるための緊急停止の仕組み。
- Evidence(判断根拠)
- 診断の根拠となる情報。何をどう確認したのかを後からたどるために保存する。
- Human Review
- レポートを納品する前に、担当者が内容を確認すること。
- Harness
- AIに任せる判断と、仕組みとして固定する制御を組み合わせ、AIの動きを管理・制御する枠組み。
- Live E2E
- 実際のAI APIを呼び出して、処理の始まりから終わりまでを途中で切らずに一連で実行すること。
記載されている会社名・製品名・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
セキュア・バンク株式会社について
セキュア・バンク株式会社は、日本エンタープライズ株式会社のグループ会社として、サイバーセキュリティ領域における各種サービス・技術開発に取り組んでいます。
AI技術の進展を踏まえ、従来型のサイバーセキュリティサービスに加え、AIを活用したセキュリティ技術の研究開発を推進していきます。
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